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避難区域の牛の殺処分と、“殺人ユッケ”

昨日、官邸の枝野が、福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域にいる家畜について、殺処分を指示しました。
20キロ圏内の家畜、殺処分へ 枝野官房長官が発表 2011年5月12日16時19分

「所有者の同意を得たうえで、原子力災害対策特別措置法に基づいて苦痛を与えないように安楽死させる」とのこと。

安楽死ですから薬を使うのでしょう。
ですので市場には出回ることはなく、“安楽死”させた後は、牛の死体は野積みにされたままでしょう。焼却すれば放射性物質が周囲に飛散してしまいますから、今すぐにはできないはずです。

このニュースを読むと、いくつかのことが分かります。

枝野が殺処分の指示を出す前までは、こういうことになっていました

福島県の計画的避難区域内の家畜牛について、全国24都道府県が受け入れの意向を示していることが9日、農林水産省の調べで分かった。
区域内には約9300頭の牛がいるが、受け入れ可能数は計1万頭程度に上る。

福島県は、繁殖用の牛はなるべく別の場所に移動させる方針だが、移動先の希望は近隣に集中するとみられ、調整は難航も予想される。
肉牛は家畜市場への出荷を促進、乳牛は基本的に食肉処理する方向だ。

農水省によると、飯舘村、葛尾村などの計画的避難区域に、東日本大震災前には約9300頭の牛がいた。
内訳は繁殖用牛が約1900頭、肉牛が約6300頭、乳牛が約1100頭。区域内の畜産農家が移動先の確保を要望していた。

(共同)

(毎日jp  2011年5月10日 0時59分)

つまり、少なくとも、5月10日の時点までは、福島県の避難区域内の牛は他の都道府県が受け入れ表明をしており、畜産業者もそのように動いていたのです。

敏感な畜産業者は、福島ブランド牛が時間の経過とともに被曝線量が増えていくために、買い叩かれることを恐れて早めに屠殺処分にしてしまったことでしょう。
そうです、放射能汚染牛は、すでに市場に出回って、私たちの口に入ってしまいました。

避難区域内の牛肉は、加工肉、あるいは模造肉の牛脂などとして、広範に広がってしまったでしょう。
トレーサビリティだ、エビデンスだ、と言ったところで末端の消費者である私たちには分かりません。

そんなとき、例の“殺人ユッケ”騒動が起こりました。

都内の食肉卸業者が、交雑種の牛を「和牛」と称して焼肉チェーン店に卸していたことが発覚。食中毒とはいえ、4人が亡くなる大事件。

この“殺人ユッケ”事件は思わぬ広がりとなりました。
この焼肉チェーン店の若社長のキャラクターが、一風変わっていて面白いので、大震災のニュースそっちのけで、テレビのワイドショーが何度も取り上げたからです。

ところが、この牛肉、個体識別番号から福島県内の畜産家の男性が飼育していたことが判明
男性によると、さいたま市食肉中央卸売市場で1頭約45万円、1キロ当たり約1000円で競り落とされた、とのこと。

マスコミは、厚生労働省が生の牛肉を出すことについて法的な網をかけていなかった点に絞って報道しています。

しかし、もともと日本の厚生行政はザル法ばかりで、規制強化のために、仮に新しい法律ができても厚生労働省自体が、その運用方法が分からず、法の網がかかるまで長い時間がかかるのです。
私は何度も、そうした事情を聞いてきました。

しかし、本当のことは別にあるのです。

その“殺人ユッケ“の肉が福島産だったことです。

人々の記憶は頼りないものですから、いずれ「福島産牛」という言葉から、“殺人ユッケ”という連想が働き、風評被害を長引かせることになります。

福島県というだけで、ただちに放射能汚染牛だと決め付けるのは間違いでしょう。
ただ、それもあくまで「程度」の問題なのですが。

肉・野菜・魚… 福島ブランドが崩壊してしまった今、こうしたケースは増えてくるものと思われます。

この避難区域内の牛の扱いですが、焼肉チェーン店の食中毒事件が起こらなければ、避難区域内の牛が全国に散らばっていたかも知れない、ということです。

特に種牛などが、あちこちの牧場の牛とかけ合わせれた結果、奇形の牛が生まれないとも限りません。
そうしたことがあれば、その土地の畜牛も風評被害を受けることになってしまいます。風評被害の拡散が起こるのです。

で、牛はかわいそうなのですが、こういうときは政府の毅然とした態度が必要なのです。

ところが政府は、“殺人ユッケ”事件が起こるまでは避難区域の牛を別の都道府県に移設することを容認しようとしていたのです。
避難区域に人間がいることは危険です。
しかし、牛については食用に供することができると考えていたのですから、そのキラリと光るセンスに驚きます。人命より補償金額を減らすこと…。

宮崎県では、人間が食べても害がないと言われている口蹄疫牛は全頭、早々と殺処分を決めても、福島県では放射能に大量被曝した牛は食べても「直ちに問題はない」と言うつもりだったのでしょう。

どういうことかというと、補償対象となる牛の頭数が減るまで猶予を置き、食肉用として市場に出してください、というシグナルを出していたのです。
政府が殺処分命令を出す前に、目ざとい畜産農家は、すぐに手を打って現金化しました。

そこに、“殺人ユッケ”事件が起きてしまったのです。その肉は福島産の交雑種牛でした。

枝野が、避難区域の牛の扱いに思い至らなかった、などということはありません。枝野が被災地を訪問したとき、20km圏内には入りませんでしたから。家畜が放射能に汚染されていることは十分、承知していたはずです。

NHKのニュース取材班が、飯館村の畜産農家が、我が子のように可愛がっていた乳牛を殺処分に出した様子を報告していました。
私は、その経営者の表情ばかり見ていました。

乳牛を積んだトラックが遠ざかっていく光景を眺めて、その畜産経営者はホッとした表情を浮かべたのです。
取材したのは、枝野が殺処分を発表する前です。

その肉は一部は加工食品などに使われるそうです。

何を言いたいかというと、放射能に汚染された畜肉、野菜は、どうしても市場に出てきてしまうということです。
特に、魚は注意です。

これは10年後を見据えた考え方です。

でも政府は、そうした考え方ができないのです。
クライシス・マネジメントという観点から、今、波状的に広がりつつある事象を俯瞰的に捉え、多くの想像力を働かせることは、もっとも彼らの苦手とすることだからです。

そのために、過去、何度も霞ヶ関は多く国民の命を奪ってきました。
今度は、今のズサンな行政の結果が顕われるのが10年経ってからですから、誰も責任を取らないでしょう。

だから、私たちは多くの想像力を働かせる必要があります。
といっても、今後、半年、あるいは1年でいいと思います。

そのときになれば、いろいろなことが表面化してくると思います。
自分たちが、どんな暮らしをしていけばいいのか、分かってくると思います。

肝心なのは、ほとんど情報が出されていない今だと思います。
この時期を、どう乗り越えるか。




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